みなさんこんにちは✨
さて今日は、この冬に開催された、“日本場面緘黙研究会”主催による研修講座2022へ参加したことを記録したいと思います(↓)。
こちらの研修講座は日本場面緘黙研究会が主催するもので、年に一度、『正しい知識と援助技術を学ぶ』という目的で開催しているとのことでした。
私は昨年(2022年)の春に5歳になる娘の場面緘黙症への対応を開始したことをきっかけとして、娘が診断を受けた夏頃、情報収集の一環としてこちらの日本場面緘黙研究会へ入会させていただきました。発行されるニューズレターも有用な記事がたくさんで、とても勉強になっています。
場面緘黙症に関しては、私自身もかつて子供の頃に当事者でした。だから私はその当事者の心の内や『どんなふうに話せないのか』を感覚を伴う実体験として知っている上、今の私はそれを他人に語ることも可能です。
私は、とても興味がありました。
今、この場面緘黙症に関しては、どのような視点からどのような研究がなされているか。またそれらはかつての当事者であった自身の感覚と経験に照らしても障害の実態にきちんと則したものであるのかという点にも強い関心がありました。
もちろん私はこれまで研究者としてずっと働いてきておりましたので、やろうと思えば自分で医学論文を検索しにいくことも、そしてそれらを読み込むこともできると言えばできるのだけど、関連論文の数はきっと膨大であろうしと想像すれば重い腰が全く上がらず、そんで『きっといつか総論を聞ける日も来るかなー』って楽観的な前向き放置のままでした🤣
だから今回、私はこちらの研修講座で聞けるであろうお話をずっと楽しみにしておりました。
目的通りの、学びの多いお話が聞けただろうと思っています。ここに少し感想がてら、記録しようと思います。
日本場面緘黙研究会の研修セミナーを聞いて
研究と事例から学ぶ研修会2022
本会は、最新の研究知見と事例研究から学ぶという二部構成でした。
奥田健次氏の行動分析学の観点からのコメントと共に進行し、第一部の研究に関してお話してくださった研究者は、松田壮一郎氏(筑波大学・博士(心理学))及び藤間友里亜氏(筑波大学)のお二人でした。
トピックは、場面緘黙症の“診断”について。
これは私もずっと疑問に思っていました。場面緘黙って、一体どうやって診断されているのだろう。
私自身の話をすれば、私は場面緘黙症を有していたとは思っていますが、私自身は診断を受けたわけではありません。時代的にも周囲は無知であり、症状を医学的に見出されたり支援を受けられる状況にはなかったのです。
しかし私の娘の場合は違います。彼女は今、適切な介入を受けていると思います。昨年にその診断を受けた際(↓)、私は診断までの経緯については医師からこのように説明を受けました。
緘黙は難しい症状です。診断のためには本人及び保護者との面接に加えて、何か他の問題が隠れていないかを検査します。具体的には、知的障害等で言葉を理解できていない可能性や、そもそもの話す能力の有無や興味の偏りや対人反応性についてなどです。
なるほどなるほど。この説明を聞いて、私はきっと診断について理解できたとは思います。
つまり、当人の認知や発話、言語を包括的に評価していき、それらに大きな問題が見出されなかったにも関わらず、かつ自宅などの安心できる場では話しているが別の社会的状況下では話すことが一貫してできない場合において場面緘黙の診断が下されるということでしょう。
でもさ。
言っちゃなんですが、この時の私は、
そんな消去法みたいな診断しかできないの?
って感じたりもしたのです😅(素人が印象で勝手なことを申しております🙇)
研修会の話に戻ります。
本会の第一部では、まさにその診断に至る“基準の欠如”に関するお話でした。
認知や発話や言語能力に関しては、数値化しながら測定できるだろうと思います。
だけど診断確定のための面接や質問紙による回答においては、その信頼性が不足するかもしれません。その回答は回答者の認識にしかすぎず事実ではない、また場面緘黙症の場合には当人に診察室での発語がないので保護者等の別の人間が答えることになるケースも多く、それは信頼性という観点でやや問題があるでしょう。
そしてそれらの行動および状況に基づき“経験のある医師”が“総合的に”診断を下すことになるわけですが、それもつまりは科学的なデータではなくその医師に大きく依存するものなのです。すなわち人が変われば変わってしまうということであり、緘黙の診断においては明確な基準が存在しない。
再現性が担保されないものは科学的とは言えません。
そのことが、現状の場面緘黙の診断における大きな課題だということでした。
ちなみに『再現性』というワードついて聞きなれない方へ、これは私も若い頃に夢中で読んだ森博嗣先生のご著書がわかりやすいと思います(↓)。上から目線で恐縮ですが、こちらは教養としても特性のある子を育てる上でも必読の書籍かと思います。よかったらどうぞ。うちにもあるので、お近くの方は貸しますよ👍
詳細については松田氏らの最新の医学論文がオンラン上で誰でも読めるということですので、ご興味がある方はそちらを読んでみてくださいね。
今後は以下の研究が求められると結論づけられた、非常に有意義なご講演でした。
- 場面緘黙の人の発話がどのような刺激でコントロールされているかを明らかにする
- 『発話』の測定方法の検討、声にでなくとも筋肉の動きの測定なども有効か
- 『場面』の測定の難しさ、同じ場面でも状況が異なる場合がありそれをどう評価するか(同じ教室であるが、教師が同席するかどうかの違いなど)
私は、この緘黙の診断方法の向上のために注力される研究者が存在することを心強いと感じられて、とても前向きな気持ちになりました。研究の進展に期待したいと思います。
事例から学ぶ:年齢とともに改善は難しくなっていく
第二部の事例から学ぶというご講演は、精神科で場面緘黙を診察しておられるという仁藤二郎氏(↓)のお話でした。
お話の中で、
場面緘黙は、年齢が上がるほどに改善が難しくなっていく
種々の事例がそう示す、そんな傾向がとても印象深いと思いました。
年齢が上がるについれて改善が難しくなる理由としては、就学後には一人だけ特別扱いが難しいなどの理由から教師等を巻き込んだ介入が困難になっていくことが挙げられました。常に周囲が子供の場面緘黙への対応に理解を示す方ばかりではなくなっていく、そういうことかもしれません。
これは私も『そうだなー』とは思います。
当サイトでもその経緯を書きましたが、私の娘はずっと対応開始のタイミングをはかっていて、4歳後半に児童精神科の初診、そして5歳になる頃には診断を受け順調に専門家チームを結成し、おかげさまで保育園でも懇切な介入をお願いすることができています。
対応開始がこの時期になったことは、娘の状況でようやく条件が整ったと感じられた時期だったからです。
- 娘の心身が成長し、自身の障害にきっと自らの意思で向き合うことができるだろうと感じたこと
- スムーズな就学への移行を目指し、入学前にできるだけ支援の地盤を整えておきたかった
非常に良いタイミングでした。最適だったと思っています。
特に、娘が通う保育園において、娘の場面緘黙への対応に親身になっていただいていることが嬉しいです。保育士さんは、きっともともとが子供の発達に強い興味を持っておられる方が多いのでしょうね。そして私が『今日はこんなことが出来ましたよ!😊』と娘の成長を共に喜びあってくれる雰囲気に支えられていることは、本当に恵まれていると思っています。しかし、これは就学前のこの時期だから叶うのだろうとも思います。
就学すると学校では先生方も多忙ですので、さらに悪いことに、緘黙児は一見“手のかからないおとなしい子”に見えてしまうケースが多いため、どうしても支援は行き届きづらくなるのでしょう。そういうことだろうと思います🤔
また、これに対して『そんなことないんじゃないかなー』とも思う理由は、年齢が上がるにつれてこそ本人の内側からの『話せるようになりたい』という動機が明確になり、それに向けて自らの頭で考えながらの努力と試行錯誤ができるからです。
また、進学等で環境が変わることをきっかけにして話せるようになったという経験談も、場面緘黙の当事者では割とよくみられるきっかけです(↓)。私自身も、なんとなくですが高校進学をきっかけに変わった面はあると思う。
そのような、“新しい環境”に入る時は大きなチャンスとも言えるわけです。そのようなきっかけはある程度の年齢になっていれば定期的に訪れますので、どうか有効に活用してほしいと思います。変化が起こる前は不安も強く出ますので、例えば新しい学校の下見に行ったりと時間をかけて慣れておくことも有効です(←個人的な意見ですが、それは『普通の見学』とは心構えが異なります。どこに何があるかに加え、いざとなれば落ち着くために潜めるようなそんな場所も探しておくと良いのではないかと私は思うよ👍)。
しかしながら、場面緘黙を克服しないままに大人になる人もいるようです。その方のお気持ちも、私はよくわかります。だって緘黙の克服には、ものすごく大きなエネルギーを要します。一人で乗り越えることは大変です。
だけどその時、周囲の手助けがあればそれはどんなに心強いか。それは何歳になっても変わりません。
出来ることから、一歩ずつ。
それは幼児であってもどれだけ年齢が高くても、普遍のスモールステップです。
娘の日々も、実際はかなり“一進一退”のような状態です。当サイトでは順調だったり喜ばしいことばかりを書く機会が多いのですが、やはり大変な部分もまだまだあります(←それは時間の都合でサイト上に書いていないだけです、書きたくないわけではありませんのでそのうちに。)。つい先日にも、私が先を急ぎすぎてしまい、久しぶりに娘のあの視線も動かない硬直した無表情を表出させてしまいました😵やっちまった!😱と思ったよ…。
それでも私たちはこれからも、一歩ずつの挑戦をいつまでも続けていくつもりです。
そのための、有用な知見が得られました。とても勉強になる研修講座でした。
また来年も受講したいな、今度は対面で参加できたら嬉しいなと思っています😊
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🌟関連書籍の紹介🌟
↑:日本場面緘黙研究会の会長を務められる園山繁樹先生が書かれた本です。私は最初に一冊読むならこれかな、って印象を受けています。
↑:事例が多く、緘黙への支援の例を簡潔に学ぶことができます。
↑:今回の研修会の司会とコメンテーターを務められた奥田健二氏(行動分析学者)の書籍です。非常に興味深いので、最近少しずつ読んでいます。面白いです。行動分析学は魔法のようだけれど魔法ではない、明確に“やり方がある”ことを示していると感じています。
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