みなさんこんにちは✨
私の娘は5歳になる前に医療機関を受診し始め、今夏にはようやく医師より“場面緘黙”および“自閉スペクトラム症”との診断を受けました。
私が娘の場面緘黙に気がついたのは、かなり早期のことでした。
私自身も子供の頃に、同じ場面緘黙症を有していました。だから私は、娘の自宅外での特異とも言える過ごし方にそれが場面緘黙症であろうことにすぐに気がついておりました。
あぁ、私が子供の頃と、おんなじだ。
私はこの症状のために、長い間、とても辛く苦しい思いを抱えてきました。当時の私が得られなかった、あらゆる支援を娘にはどうか与えたい。
こうして娘は現在、その対応のために医療機関や療育機関に継続的に通っています。しかしながら場面緘黙それ自体には服薬や療法などの確立された治療方法はありません。
診断を得て、その子その子にあった支援を模索していくしかないのです。親も、そしてきっと本人も、少しでもきっかけを掴めればと手探りにでもやっていくしかありません。
そんな私が先日ふと耳にした、驚くべき実態についてはなんだかとても困惑したし考えさせられるものがありました。今日はそんな出来事を記録しておこうと思います。
全てのお子さんに適切な支援を
もう来なくなるご家庭も、たくさんある
先日、娘は場面緘黙の診断を受けた医師のもとへ再診のため数ヶ月ぶりに行きました。
そこで私は娘の近況を報告したり、この期間にはどのような支援者と繋がることができたか、そちらとの関係性の構築状況、今後の見通しなどを話しました。その上で、まずは1年半後の就学に向けての動き方を相談したいと思っていました。
療育機関では信頼関係ができてきたようです。保育園とも話し合える関係があり、ありがたいことに娘の困難には出来る限りのご配慮をいただいていると思います。娘も安心できたようで、これまで話せなかった先生とも会話が出来るようになるなど明らかな進歩も見られます。
住まいの地域では子供発達センターの相談に通えることになりました。主に就学に向けてお力添えをいただきたいと願っています。
私はこの数ヶ月間の進捗をひとつずつ報告し、医師も頷いてくださって私たちは前向きに現状を共有することができました。
よかったですね。特に保育園の対応は素晴らしいですね。いい方向性だと思います。
それから私は聞きたかった疑問点を質問したり、医師からも不安を和らげるための提案や今後このようなことに挑戦してみてはどうかというアドバイスをいただいたりととても有意義な時間を過ごせました。
しかしここで私は、医師のなんでもない一言に、本当に大きく驚きました。
今の調子で進めていきましょう。診断を受けて、それっきり来なくなるご家庭も多いことが実際ですが、よくやって下さっていると感じます。
『診断を受けて、それきりもう来なくなるご家庭も多くある』
私は意味が分かりません。とても困惑した気持ちでした。
え、来なくなる人がいるんですか?それではそのご家庭は、どのような方針なのでしょうか?
分かりません。しかし本当に診断が出たら『わかりました』とそれだけ言ってパッタリと来なくなってしまうご家庭も多いことが実際なのです。
場面緘黙症は周囲を困らせることはない
私はとても衝撃でした。
来なくなるって、どういうことだ?
もちろん場面緘黙に関しては、これですぐに治ります!という医学的に確立された治療法はありません。しかし私は場面緘黙の克服に向けては主治医を中心とした専門家や支援者のネットワークがとても重要であると捉えているので、私は本当に驚きました。
どこか別の医療機関で、他の医師に診てもらっているのだろうか。
親の会や他の支援団体と繋がって、独自に何かしらの手立てを探しているということだろうか。
そういうことであれば良いのですが、もしもそのご家庭がそのまま何もしていない、もしくはその障害を受け入れられず、何をすれば良いのかが分からなくて何も動きを取っていないのならば深刻だ。私は他所のご家庭のことながら、大きな不安に駆られました。私はかつての当事者として、当事者が抱え得る苦しさを我が事のように想像することができるからです。
場面緘黙は、大きな特徴を持っています。
それは緘黙のお子さん自身は指示は聞けて集団生活にもそれなりに参加することができるため、当人は周りに迷惑をかけるわけでもなく、辛いのは本人だけだという点で特徴的だと思います。
場面緘黙症の当人は、周囲の社会生活に迷惑や影響を及ぼしません。ただ、本人が困っているだけで。
だからその子が緘黙であろうがなかろうが、周囲の人は別にどうだっていいのです。それは親も含んでいます。自宅で家族とはコミュニケーションを取れるケースが多いので、親であっても子供の場面緘黙に差し当たって困らされることはありません(当人の自立には影響するかもしれませんが)。
私は『それきりもう来なくなるご家庭も多くある』と聞いた時、そんなことがハッと思い浮かんでしまいました。もしかしたら、だから診断を受けたとしても、
『(親である自分は困っていないし)そのうちなんとかなるでしょう』
と様子見をしてしまうことも十分あり得るのではないだろうかととても恐ろしくなりました。
様子をみても、“そのうち”は向こうからはやってこない
だけど、私は強烈な記憶として知っています。
場面緘黙症の当人が社会の中で思うように言葉が操れず、集団の中で奇異にも見られるその辛さ。私にはチック症もありました。声が出ないその時には顔の筋肉が不随意にピクピク動いてしまい、それを揶揄われることだってありました。私はただ下を向いて、何も言えす、ただ時間が過ぎることを待ちました。
学齢期は自尊心や自己肯定感の土台が育まれるべき大事な時期です。しかし私はそんな経験を積んでいくことが出来ませんでした。
また、喋らない子に、喋りかけてきてくれる人は少数です。
集団の中ではどうすればいいかわからなくて、全力でやっているつもりなのにうまく行かず疲弊して、そのつらさを聞いてくれる友達や仲間も周囲に出来づらい。
本当に、そのうちなんとかなるのでしょうか?
おそらくですが、待っていても、その“そのうち”はそうそう向こうからはやってこないと思います。
私の場合は、自身の成長と共に自分の努力でこれを克服できたという自負があります。もちろん本人の努力次第で“そのうち”がやってくる可能性はゼロではないです。
だけどそれは何年先かも分からない。来ないままに大人になって、自立に支障をきたしうるかもしれません。
そしてその“そのうち”に巡り会える日が来たとしても、それは本人の試行錯誤、恥と苦悩、挫折とそれを乗り越えようとする勇気、何より並々ならぬ努力などの賜物であって、決して様子を見たおかげではないことを重々含めおかなくてはなりません。
どうか場面緘黙症の当人たちが苦しい時間を過ごすことが少しでも短くあるように。自分らしく生きていくために、長期的な視点をもって助け支えてくれる支援者と出来るだけ早く巡り合える日が来るように。
私はそう願わずにはおられない、そんな医師の衝撃的な一言でした。
ーーーーーーーーー
🌟場面緘黙に関する団体等の紹介🌟
当事者が協力して啓発活動のために設立した団体です。掲示板によるオンラインでの情報交換が可能です。2022年11月には富山県でオフラインの『おしゃべり会』の企画があるようで、富山県には私もゆかりがあるので、密かに参加しようかどうしようかと狙っています。
今は活動を実質的に終了しているようです。
有志の方により開設されたLINEオープンチャットでは、とても活発な情報交換がなされています。私も(見るだけですが)時々覗いて、他の当事者の経験談から学ばせてもらうことが多いです。
他にも地域ごとに、様々な緘黙支援の会があるようです(場面緘黙を考える会富山など)。お住まいの地域にもきっとあるのではないでしょうか。どうか一人で抱え込まないで欲しいと願っています。これらの団体等の活動に参加することも検討されてみてはいかがでしょうか😊
コメント