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 #3 息子は本当になにもせずに過ごしていた

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当サイトの開設に至る経緯-混乱の記録

新型コロナウイルス感染症の流行に伴う一斉休校開始から、みるみる気力が抜けていった息子。しばらくは自宅で留守番をしていましたが、食事を取った気配がなく、ゲームなどに没頭している様子もありません。一体1日をどのように過ごしているのだろうと心配していた折、3月下旬になり会社員の夫が一足先に在宅勤務となりました。夫が在宅することで息子の生活を見守り、生活リズムを戻せるのではないかと期待しました。

夫の在宅勤務開始。小学校は春休みへ。

3月下旬。会社員の夫が在宅勤務が開始するにあたり、夫は早速自宅の一室の仕事環境のセットアップを進めていました。

夫は「内外との打ち合わせもあるため、ある程度は別室で集中したい」とは言うものの、共働き核家族の我が家において、自宅に親が1人いるのといないのとでは心配度が大違いです。

平日朝、私は8時過ぎに自宅を出て2歳の娘を保育園に預けてそのまま研究所へ出勤します。

そして夫は朝ゆっくり起きてきた息子に朝食を取らせ、息子と「今日はどのように過ごすのか」「宿題をどこまでやるのか」について確認しあった後、午前9時より別室で仕事に取り掛かります。そしてお昼には息子に声をかけて一緒に昼食をとり、午後はまたそれぞれで過ごす、という生活様式が始まりました。

この頃、ちょうど小学校は通常は春休みが始まる時期でした。残念ながらこの年は6年生のお子さんたちの卒業式も大きく略式のものになりましたね。

小学校から、春休み中の課題お知らせの学校だよりなどの配布物があると連絡があり、子供ではなく、親がそれぞれ指定された時間に取りに来るよう指示がありました。親が取りに行くのは、子供が取りにきたら久しぶりに会う友達とはしゃいだりして密になることが予想され、それを防ぐためとのことでした。

そして息子が2月から通い始めたばかりの進学塾も教室を閉じる旨の連絡があり、カリキュラム分のテキストが次々と容赦ない分量が郵送されてきました。テキストは基本的に自宅で学習し、オンライン授業の体制が整い次第オンライン学習が開始すると案内がありました。

息子は一歩も外に出る機会がありません。

いや、息子は変なところで律儀で頑固で、小学校のお知らせで「できるだけ外出を避け、おうちで過ごしましょう」と書かれていれば「絶対に外出しない!」と自ら言い張りました。ニュースを見ては未知の感染症を真剣に怖がる様子も頻繁に見られました。

気分転換になればと私が近所のスーパーへの買い出しに誘っても、「外出しちゃいけないって言われてるでしょ!!」と声を荒げて泣きました。

外では桜が咲き始めました。この時期の東京は晴天の日が多く、桜も咲き始めたのに息子はずっと自宅から出ることを嫌がりつづけました。

本来はもっとウキウキする季節であったはずなのに。

息子の学習意欲は一層低下していった

在宅勤務中の夫は日中は別室で仕事をし、時々息子の様子をみるようにしました。

朝食を食べ、今日取り組むべき課題について夫と確認しあった息子は自室の勉強机で課題に取り組んでいるはずでした。

お昼時になり、夫が息子に声をかけ昼食に誘うと、部屋から出てきて一緒にダイニングで昼食をとります。

この時、午前中にやると言った宿題はやってあったりやってなかったり。そして午後にやることを確認し合い、それぞれが自分の机へ戻ります。

18時頃、私が娘と帰宅して様子を聞き、息子は普通に話もするし、少し生気が戻ってきているようだと夫は感じていたそうです。それから私はこの日の宿題の丸付けや間違い直しを一緒にやりました。

学校の宿題や塾のテキストは、解答・解説の冊子も一緒に配布されていました。

少し前から、息子の学習が答えの丸写しになっていることに気づいていた私は、「答えを写すのは学習じゃないよ、よく考えて、まずは自分の力で書いてみようね」と諭しました。

それでも丸写しは続いたため、私が解答冊子を預かって別室に置いて出勤すれば、息子はそれを探し出してやっぱり丸写しをしました。理科や社会もそう。

テキストを読んだらちゃんとわかるように書いてあるから、答えじゃなくて、テキストをみながら問題を解いて欲しい」と話してもだめ。最終手段だと思い、私が家から解答冊子を持ったまま出勤して家に解答がない状況を作り出せば、その日から息子のテキストは真っ白のままになりました。

息子がパニック行動を起こすようになった

それでも、学校の宿題は提出期限が決まっているし、進学塾のテキストに至っては毎月末に習熟度を試す実力テストがあります。塾ではそのテストの結果次第でクラス分けが再編成されますので、親としては、はいはい、丸写しでいーよ、終わればいーよって訳には行きません。(このときは、背景に発達障害があると思いもよらず親も必死でした。わかっていたら、終わればいーよって思ったかもしれませんが…どうかなぁ?)

息子と話し合ったり、叱ったりなだめたりもしましたが、その都度息子は「分かってるーーーーーーー!」と声を荒げ、泣いて取り乱します。

ソファに走って飛び込んで、バタバタ叩いたり頭を打ちつけたり、あるときはリビングの壁を蹴ったりしながら泣き続けました。泣き出すと手がつけられず、また、息子自身もその状態を自分で鎮められずに苦しんでいるようでした。

私(と夫)は、せめて暴れる息子の手足が当時2歳の娘に当たらないようにまず娘の安全確保をし、それから息子を抑えたり、叱ったり宥めたり、別室に連れていったりとなんとかこの状況が収まるように手を尽くしました。

この頃の息子のパニック行動は学習上の指摘のみをきっかけとするものでなく、多岐にわたるきっかけで引き起こされていました。

例えば「食事中は足を上げないで」「お口が止まっているよ」という声かけ。息子は食事に関心が薄いのか、幼い頃から食事中の姿勢が維持できなかったり、ぼーっとしたり、口に物を入れたまま長い時間止まっていたり(気持ち悪くないのかな?と思いますが息子は気にならないそうです)します。

これまでは注意をすればスッと足を下ろしたり、ハッとして再び食事に意識を戻したりしていました。しかし、この頃は泣いて壁に頭を打ちつけ始めるようになっていました。

親はなにが息子のスイッチになるかとハラハラしていました。

もう息子の体重は30キロを超えています。息子が暴れたら比較的小柄な私(身長150cm)ではもう押さえきれず、私たちはどうしたら良いのかと悩む日々が続きました。

息子は日中、何もせずに過ごしていた

息子の様子に、在宅勤務中の夫もヤキモキしていました。息子を刺激しなければ、彼はパニック行動を起こすことはありません。しかし、小学校の宿題や塾のテキストは、もう全く進まなくなっていました。

この頃、夫は息子と話し合い、息子に「部屋のドアは常に開けておくように」と指示をしました。

息子は嫌がってすぐに自分の部屋のドアを閉めようとしましたが、繰り返し「少しでいいから開けておいて欲しい」と話すことで息子は10cmくらい自室のドアを開けたまま過ごすようになりました。

これにより、自宅にいる夫がトイレや休憩に立つとき、それ以外にも仕事の合間に息子の様子を頻繁に見るようになりました。

ある日、私がいつも通り夕方に帰宅した際、夫が暗い顔で言いました。

信じられないんだけど、息子は朝に自分の机に向かって宿題を広げてさ。鉛筆をもったりもするんだけど、そのまま何時間もずーーっと、ただ前を見つめて、ただ一点を見つめてぼーっと座ったままなんだよ。そんなことが、可能だと思う?

だったら、勉強なんかしなくていいから、ベッドで寝転んで漫画でも読んでいて欲しかった。今日は漫画読んじゃったから勉強しなかったーって笑って誤魔化して欲しかった。本当に、アイツは全く何にもしてないんだよ。いつからそうやって過ごしていたんだろう…。

私も、泣きそうな気持ちになりました。

おそらく息子は長引く自粛生活に精神的に滅入り、病的とも言える状況にあるのだろうと思われました。

うつ病かな、精神科に連れて行けばいいのだろうか。子供を見てくれる精神科は近くにあるのだろうか。

3月下旬。首都圏の感染者数は加速度的に増加し、明日にでも緊急事態宣言が出される可能性が日に日に高まっていきました。そしてその結果、諸外国同様のロックダウン等、私もようやく出勤が停止される状況が来ることが見えてきました。実際に、3月末には私の勤務先においても(1) 在宅での研究環境整備、(2) 進行中の生化学実験の全面停止、(3) 研究者間コミュニケーションの維持に努めるよう指示がなされました。これはもしも明日から出勤が叶わなくなった場合でもそのダメージを最低限に留めるための措置でした。

このような状況において私は、緊急事態宣言が発令されて、私も家にいられるようになれば息子に付きっきりでいられるだろう。様子をみて、小児精神科を受診できるように情報を集めておこう。勉強もなんとか再開しないといけないから、息子の隣で付きっきりで過ごそう。

そう思いながら、私も在宅勤務へ移行することを少しずつイメージしていきました。

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