みなさんこんにちは✨
前回の記事はこちらです:
娘の場面緘黙症への対応において、私たちは地域の情報を得たいと思い地域を管轄する保健センターを訪れました。
そこでは1年半後に迎える就学に向けて“就学移行支援”というものを受けられること、また、療育機関でのトレーニングは難しいかもしれないが相談には乗ってもらうことが可能であることを教わりました。とても有意義な情報でした。
ここで私たちはさらに、とても有効なアドバイスをいただきました。心理士さんはパッと顔を上げて、こんなことを仰いました。
挨拶って、何も“言葉”で言うだけではないと思います。違う方法で自信をつけてはどうですか?
このアドバイスは、娘の“今”の生活を大きく変えることになりました。
会釈だけ、視線を合わせるだけでも立派な挨拶になるのです。もしも娘が挨拶ができないことで引け目を感じてしまうのならばそのやり方自体を変えてしまえば良いのだと言う、そんなアドバイスに私は感銘を受けました。
挨拶が出来ない娘の意識改革
挨拶をしたい気持ちはあるが、出来ない娘
挨拶は、たかが挨拶ではあるのですがとても大事なアクションです。
少し大袈裟かもしれませんが、笑顔で気持ちの良い挨拶ができればそれだけで人間関係は70%くらいは成立するのではないかと思います。私もかつては娘と同じ症状で挨拶のできない子供でしたが、大人になってからはその重要性、及びその手間の割には人間関係において想像以上に大きな効果が見込めることを強く実感しています。だから娘に対しても、どうか挨拶だけでもできるようになってほしいと、そう思ってしまう私もいます。
娘自身にも、“挨拶をしたい気持ち”はあるようなのです。だけど娘は言葉がどうしても出てきません。
例えばそれは保育園の登降園時。先生方やお友達のパパやママに『おはよう』『バイバイ』と声をかけられても目を逸らし、俯くことでしか対処ができない娘の様子を私はずっと気にしていました。
分かっているよ。ご挨拶をしたい気持ちはあるんだよね😊
うん。でも、難しい…。
挨拶が出来ないことは、娘自身のストレスにさえなっている。なんとかしてやりたい。成長を待つしかないのだろうか。
娘だって、分かっています。ご挨拶をできた方が良いことくらい、娘は重々知っています。だけど言葉が出てきません。そんな本人が一番辛いことを私も重々知っています。
私も挨拶の習得には苦労をしました。恥ずかしい思いも、嫌な思いも、悔しい思いもしてきました。娘にもいつか何かのきっかけが訪れて、きっとその壁を乗り越えていけるだろうとは思うのですが、自信を失ったり無力感を感じたりというそんな負の経験はなるべく少なくあってほしいと願わずにはおれません。
言葉で言うだけが挨拶ではない、という指摘
私は保健センターにおいて、引き続き心理士さんとそんな話をしていました。
外で知っている人に挨拶をしてもらったり声をかけてもらうことも多々あるのですが、それもまた娘のストレスにつながっていることが私はすごく心配です。
保育園のお友達のパパやママでは、娘がご挨拶の返事をしないことで『聞こえなかったかな?』と思われるのだろうと思いますが、何度も『おはよう』と繰り返し言ってくださる方もいるんです。それは本来はとてもありがたい話なのですが、娘の顔はどんどん曇ってしまいます。
私はどうしたら良いでしょうか。私に出来ることは何でしょうか…。
外で誰かに挨拶などをされた時には、これまでは私が娘の代わりにすかさず挨拶を返していました。しかし、それはきっと解決にはなっていないのだと感じていました。
すなわち娘は、“自分で”挨拶を返せないことに引け目や不安を感じています。私が代わりに挨拶をしたからと言ってホッとしたり安心したりしている様子などは見られません。
私も心理士さんも、少し考え込んでおりました。しかしそこで心理士さんがパッと顔を上げて仰ったことに、私は大きく驚きました。
挨拶って、何も“言葉”で言うだけではないはずです。
例えば、視線を合わせるだけでも挨拶ですよ。会釈だったり、他の方法もあるはずです。娘ちゃんが引け目を感じず、自信をつけられる方法はきっと考えていけるはずです。
家では、何かが上手くいったときなどにハイタッチをしています。そういうことでも良いのでしょうか。
良いと思います!娘ちゃんには今度からタッチが『おはよう』と同じ意味です!
すぐに保育園にも話してみてはどうですか?周囲に協力をしてもらいましょう。娘ちゃんが取り組んでいくうちに自信が持てれば良いと思います。
もしも保育園との話し合いに難しさがあるようでしたら、先ほどご案内した療育機関が間に入ることも可能ですよ。
良いと思う。それはすごく良いと思う!
ね、娘ちゃん。今のお話、お母さんはすごく良いと思う!
今度からタッチでご挨拶しよう。良い考えだと思うよ!やってみようよ!
そのお話は、娘もしっかり聞いていました。
娘もこくっと頷いて、とても前向きに捉えていそうだと感じました。
保育園でも快く受け入れてもらえた
その翌日は、タイムリーにも娘の保育園の個人面談の予定でした。私はこれまでの経緯を丁寧に話し、今度から娘に対しては“タッチ”をもってご挨拶に代えてほしいとお願いしました。
もちろんです!すぐに幼児の先生に周知しましょう。良い考えだと思います!
さらに私は、毎朝の娘の登園時間に園の玄関でお花の手入れなどをしていてくださる男性の先生にも事情を話し、ご理解とご協力をいただけるように頼みました。この先生はとても真面目そうな年配の男性でして、娘は若干の苦手意識(?)を持っているのかこれまで一度も目を合わせることさえ出来ていないという状況でした。
実は娘は精神症状のために、言葉でのご挨拶が難しいのです。毎朝声を掛けてくださるのに、いつも目を伏せて通ってしまっていてすみません。
でも明日から、娘は“おはよう”と同じ意味で“タッチ”でご挨拶をさせていただきたいと思います。どうかご協力をお願いします。
もちろんです。いつもの時間には、手を洗って待っていますよ✨
さぁ、翌日から娘は“ご挨拶タッチ”で登園です。
前の晩から私と娘は楽しみな気持ちで話していました。
明日から、ご挨拶タッチでやってみようね。気持ちが伝われば、言えたことと一緒なの。先生方にも話してあるから大丈夫だよ😊
出来るかな〜。ドキドキする!
できるよ!きっと上手くいくよ!
そして翌日。私たちがいつもの時間に登園すると、玄関先では男性の先生が遠目からでも私たちに気づいてくださり、お花の手入れの手を止めて、笑顔で少しだけ姿勢を低くして、片手を上げて待っていてくださいました。
それ行け!ご挨拶タッチだ!
するとびっくり。
娘はオズオズとしながらも駆け出して、その先生の前に立ち止まり、そして先生の手のひらに向けて思いっきりパチーン!とタッチをしたのです。
やった!出来た!『おはよう』が伝えられたよ!
おはようが出来た!嬉しい!
娘は靴を脱ぎながら、小さな声ではありましたが、嬉しい気持ちをそっと私に伝えてくれました。私は内心では飛び上がりたいほどの気持ちでした。
それから教室に入る時にも、幼児クラスの先生方が次々と片手や両手を挙げて娘を待ってくれました。娘は大きな笑顔で全ての先生にタッチをしながらスムーズに教室に入っていきました。
言葉はなくとも、その様子には引け目などはなさそうでした。
とても堂々としていて娘の笑顔は満足そうで、楽しそうにも見えました。
こういうことで良いんだよ
教室に入っていく娘を、私はとても嬉しい気持ちで見守りました。
こういうことで、良いんだよ。
娘はこれまで、確かに一般的かもしれないけれど彼女には合わないやり方に対応できずに苦しい思いをしておりました。だけど視点を変えた素敵なアドバイスをいただいたことで、娘は『おはよう』の気持ちを他者に伝えられるようになりました。どうかこのやり方で前向きに、自信を育んでいってほしいと願いました。
それからすぐ。
娘はお友達と公園で遊んでいて、そちらのママにお菓子をもらったことがありました。
それ行け!こういう時は“ありがとうタッチ”だ!
(無言ですが笑顔で)パチーン!
ママ友も、とても喜んでくれました。
すごいじゃーん!!こういうことで良いんだよね!本当に良いと思う!良かったねーー!
ありがとう!私もね、すごく良いと思っているの。協力してくれてありがとう!
彼女は私の娘の特性についても、とてもよく理解をしてくださっているママ友です。良い方法が見つかったことと、それに伴う娘の変化を一緒に大きく喜んでくれたことを私は心から嬉しく思いました。
お菓子をもらった娘もとても満足そうな様子です。『ありがとう』の気持ちを自分で伝えることができた娘は、本当に遠慮なく(笑)次々とお菓子を食べていました。
これまではそう、何かをしてもらったとしても『ありがとう』が言えないだけに娘にも引け目がありました。だけどそんな心配は今は全く無用です。娘は自分の行動で、感謝の気持ちを伝えることができています。娘は本当に楽しそうに、お友達と一緒にたくさんお菓子をいただきました。
『何も“言葉”で言うだけが挨拶ではないはずです』
このアドバイスは、本当にその通りだろうと思いました。
それ以来、娘は毎朝の登園時には“おはようタッチ”を欠かしません。
それは“ありがとうタッチ”にも応用されていき、最近では検査のために通院している医療機関でも初対面の医師に対してさえ“さようならタッチ”をするようにもなりました。
え、タッチしてくれるの!?嬉しいな!今日もがんばったね。はい、さようなら!(パチーン!🌟)
4歳後半において彼女なりの“ご挨拶”を習得した娘は、とても満足そうな様子です。私もとても嬉しいです。
娘にのみならず、人は先天的にも後天的にも様々な困難を持ち得ます。
しかしそれらに対し、それぞれの対処の仕方があるのだということを私は改めて学ぶことができました。
その対処法を探るためにも、広く専門家の力を借りること、気づきを得るために考えること、親が動き続けることは大切です。私は娘の場面緘黙への対応を開始して、本当に多くのことを学んでいると感じました。
娘の心が少しでも軽くなったことを実感し、私はとても嬉しく感じています。
きっと娘はその特性のために、今後も様々な困難に出会うでしょう。だけど私はどんな時でも彼女なりの対処法を一緒に探し、彼女の健やかな成長をずっと応援していきたいと願いました。
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